第137回『まちむら興し塾』 2016年11月19日 |
テーマ 全国市町村を元気にする日本版DMO
コメンテーター
NPO法人ふれあいまちむら興し塾 専務理事 長坂克巳
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『まちむら興し塾』当日風景・参加者写真 |
【DMO機能を担う観光推進組織の必要性】 |
□ 観光庁資料より |
◇ 観光推進組織の変遷と現状 |
我が国では、観光推進組織として一般的般には観光協会が知られ
ているが、国際的にみると、観光推進組織は1980年代以降、余
暇での旅行に加えて、業務やMICE、その他個人的用事などの色
々な訪問需((訪問客=Visitor)を対象として、現地での受入対応機
能(CVB:Convention and Visitors Bureau:)を持つようになる。
その後、2000年代以降は、世界的な市場環境や観光行動の変
化に対応するため、地域外に対してはマーケティング(プランテイ
ンク)力を発揮し、地域内に対しては観光産業に加え、地域コミュ
ニティ、環境、文化等の調整を行う、
DMO (Destination Management/Marketing Organization)の機能が
求められるようになった。
一方、我が国の状況を見ると、実態としては多くの組織が、国際
会議等のMICEを対象とした機能は持ちつつも、CVB(受入対
応機能)としての機能を持っていない地域が多いのが実情である。
さらにDMO機能となると、中長期的な時間軸でマーケティング
を行うことができる安定性や地域の幅広い関係者と連携して事業を
推進するマネジメント機能が必要となる。
また、我が国の観光地域づくりは、観光分野だけではなく、いわ
ゆる「地域づくり」との関係性が強いところが特徴で、こうした課題
へも対応することが必要となる。
そのような背景も踏まえ、我が国の観光地域における今日的な課
題にも対応した観光推進組織の必要性が高まっている。
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◎ 「観光地域づくりプラットォーム(基盤)」の構築 |
観光推進組織の変遷を踏まえて、観光地域づくりの中核となる新
たに地域と来訪者をつなぎ、双方の満足度を高められるような取組
を持続的にマネジメントする組織体として、「観光地域づくりプラッ
トフォーム」の構築を提言している。 |
◆「観光地域づくりプラットフォーム」に求められる機能 |
多岐に亘るが7つの機能が重要とされる。また、これらの機能を
実践するためには、適切かつ十分な人材の確保・育成が欠かせない。 |
◇ 7つの機能 |
1.観光地域づくり実施基本方針の作成
2.マーケティングの実施
3.地域の特性を活かした滞在コンテンツづくり
4.地域外の顧客に対する滞在プログラムの提案
5.販売促進活動の実施
6.来訪者及び市場に対するワンストップ窓口づくり
7.各機能の提供に係るマネジメント
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【観光圏の主な取組】
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◎ ブランド価値の検討
◎ 来訪者・市場に対するワンストップ窓口の整備
◎ 地域ならではの食を提供するための仕組み
◎ 滞在コンテンツ・プログラムの提供
◎ 外国人受入環境の整備
◎ 二次交通の整備
◎ 観光地域づくりマネージャー育成
と観光地域づくりプラットフォームの構築
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取組内容 |
1.広域連携
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1)民泊を含めた体験型修学旅行誘致 |
民泊修学旅行の場合、学生の人数が多く、1市町村単位で
は受入家庭の確保が難しく、近隣市町村との連携により、
受入が可能にできる。
受入には旅館業法の規制緩和の自治体の条例、公布の発
布を含めて、事務局設置、受入規定、安心安全対策などの
指導などが必要ですが、地域全体でのそれなりの経済効果
も高く、全国の多くの市町村で積極的に誘致を図っている。 |
◇ ⇒ 全国の受入地区・組織一覧(長坂作成2016.1016現在) |
2)婚活 |
複数の地区が連携を図り、各地ならではの観光資源・グル
メを含めて、婚活のイベントに取り入れ、相互に地区の活性
化を共有する |
3)各地グルメ自慢大会、他 |
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気軽にいつでも近隣・老若男女が参加できる体験
「投資がいらない交流資源」市民サークル活動 |
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2.観光振興に活用されているICTサービスの推進 |
情報通信技術:ICT(lnformation and Communication Technology)
の発展に伴い、私たちの生活の中においても、インターネットを
通じた情報発信、ブログやツイッター等のSNS、スマートフォ
ンやタブレット端末で使うアプリケーション等、ICT技術が身
近なものとなっており、観光をする際にも様々な場面において日
本の各地でICTを活用した観光振興を図ろうと取り組んでいる。
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3.休暇取得の促進 |
~休暇に対する国民意識の変革に向けた取組の推進~ |
我が国の年次有給休暇の取得率については、依然として5割を
下回る水準で推移しており、諸外国に比べて低水準となっている。
交流人口の拡大による地域経済の活性化を図るためには、柔軟
に休暇を取得できる環境づくりに向けて、休暇改革を推進する。 |
観光庁では家族の時間づくりプロジェクトとして、学校の諸行
事の振替休業日の設定を工夫することで、連休創出による観光振
興や、お祭り等のイベントに合わせた「ふるさと休日」の設定によ
る地域振興を図り、趣旨に賛同する自治体に対し、認定を行って
いる。 |
◎ 「ポジティブオフ」運動の推進 |
観光庁、内閣府、経済産業省、厚生労働省が共同して、
休暇(オフ)を前向き(ポジティブ)にとらえ、取得して外出
や旅行などを楽しむことを積極的に促進する運動を推進。 |
※詳細は◇ ⇒ 「ポジティブオフ」のHP |
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◆ DMOの必要性 |
観光圏では、持続可能で横断的な観光地域づくりをマネジメントす
るなどDMOの組織として、「観光地域づくりマネージャー」を構成
員として、法人化された「観光地域づくりプラットフォーム」(PF)
を設置することが必要となっている。
このPF=DMOが主体となり、行政区域を跨ぐ地域間連携、官と
民との連携、産業間の連携等、多様な地域関係者と連携を図りながら、
各種取組の推進する組織を目指す。
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1.日本型DMOの基本理念 |
地域全体の観光マネジメントを一本化する、着地型 ...
「地域住民がハッピーでないと意味がない」として、
「住んでよし、訪れてよし」という基本理念とする。 |
2.日本型DMOの課題 |
1)従来型観光振興(組織、人材、資金など推進体制)の現状
と課題に対する認識
2)「観光地域づくり」の目標、進め方に対する一定の合意形成
観光によって豊かな地域づくりを行うための「目標」と、
その達成のための
「進め方」に対する一定の合意形成。
3)「観光地域づくり」を実現するための「あるべき機能」と
「機能を果たす中核人材」
4)「あるべき機能」を果たす中核人材が活躍する
「場(組織、資金、報酬)」と
「ガバナンス(権限と責任、成果評価システム) |
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《 解説 by 長坂 》 |
各地域の創成・再生・活性化を図るために、全国の市町村では様々
な目標、目的を掲げ、その実現・実施に向けて官民学の、組織・団
体・グループが、それぞれの立場・環境で活動をしています。
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しかしながら、「創成・再生・活性化」という目的は共通してるも
のの、各々組織の具体的な内容、その取組み方、考え方、方向性、
方針の違いにより、同じ地域でありながら、バラバラな、非効率の
活動をしているのが多く見受けられます。
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自治体だけ見ても交流人口の拡大により経済効果とプラス人とのふ
れあいで交流が図れます。
先ずは誘致を進める観光課、産品販売の拡大を目差す農林漁業課、
住民の生活を快適に過ごせることを推進する福祉・厚生部署と高齢者
に元気を推進するのが何と、教育委員会管轄の生涯学習課で、観光な
どとは無縁と思われる部署でも交流人口拡大に貢献できる活動があり
ます。
連携をしても各部署の活動・事業にほとんど影響が出ないはずなの
に、相互部署間アンタッチアブルの縦割りの体制。
それをどうにしかしようという動きもほとんどありません。ひたす
ら任期中、「可も無く不可も無く、無難に過ごす」ことが目標の方が
ほとんどのようです。
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また、目的がまったく同じのはずなのに、観光課においても、業界
・動向もままならない、未経験の職員のその任期が3年以内と限定さ
れ、更にその管理課にあるはずの観光協会では、自治体OB等の役員
が主流となっていて、柔軟な発想で推進しようとする方はごく少数、
創成・再生などは困難な体制です。
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地域の産業・企業を育成する商工会議所は地元商店企業のフォロー
を前提としているため、他産業との連携まで届かない状況。
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更に、地域振興に対応できるスタッフに限らず、全体を把握し、リ
ーダーは少なく、人材の育成も思うようにできていません。
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そこで、それぞれの目標に向かってバラバラに活動をしている体制
を見直し、関連組織が連携を図り、前述2の課題を共有して、関連組
織の活動を調整し、全体で「地域活性化」を推進するために新たに
「観光地域づくりプラットフォーム」としての体制、DMOの構築が注
目されています。
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加えて、DMOとしての地域活性化の運営資金は、今までの補助金
依存から原則的に(設立当初、活動資金は例外)脱却して、「金の切
れ目が縁(事業)の切れ目」永続的に活動を続けられるように、法人
として独立し、自らの運営により利益を得る体制にする。
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図表Ⅱ-45 日本版DMOの概要(平成27年観光白書より)
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日本版DMOの現状と課題を適格に表現している事例 |
▼ 地域の取組事例(4)
一般社団法人みやぎ大崎観光公社(宮城県大崎市)
一般社団法人みやぎ大崎観光公社は、まだ評価が定まっていません。
ここのポイントは着地型観光総合窓口です。これまで旧町村でバラ
バラに行ってきた観光振興のうち情報発信について、
「大崎ブランド」として一元的にアピールすることが狙いです。
平成19年から議論をして平成20年のJRの宮崎デスティネーシ
ョン・キャンペーンのときに「宝の都・大崎観光推進協議会」を
民間主体の連携組織にしようと平成22年に準備会を立ち上げた。
あくまで民間だけで組織をつくり観光協会を取り込まなかったの
は、大崎市には、鳴子、鬼首(おにこうべ)、中山平と、歴史があ
り、地域に根差した観光協会があるからです。営業をリードする中
核リーダーがいないためになかなかうまくいきません。
が、この段階で行政が入ると、行政主導になってますますうまく
いきません。
▼ まずは観光統計(数値データ)の把握から
観光庁の観光実態調査(1,742の市町村から1,470の回答)
によれば、その内の60%の市町村が持っているデータのほとん
どが「入り込み客」で、消費額を把握している市町村は全体の
18.6%です。
満足度やリピーター率の統計は、それぞれ5.4%、4.8%です。
これでは、観光客のニーズや動向の変化に対応できません。
やはりまずは統計だと思いました。リピーターとマーケティング
調査もないプロモーションばかりでは無理なわけです。
▼ 多様な主体が参画する観光振興に必要な機能
「従来型観光振興の問題点」をまとめると、まず、全体最適で
はない。
自治体の活動は行政区の範囲を出ておらず、つまり、顧客志向
ではない。
持続しない。
プロがいない。
目標不明確。
責任を取らない。
これらをしっかり反省する。
その上で取り組む観光地域づくりには、次のようなステップが
あります。
① 現状のあるべき姿を考えて、現状の課題に気が付く
(地域の将来に希望が見えることが重要)。
② 課題の解決策として、交流人口の拡大を考える。
③ 交流人口の拡大のために地域力を向上させる。
これらの議論をせずに着地型観光商品や6次化商品のつくり方
やテクニックをやろうしても難しいわけです。
これからの観光は、地域へ「行こうよ型」から「おいでよ型」
になり、地域主導になります。つまり、住民や他産業を含めた
「みんな」が主体になります。
そのためには官と民、地域と地域、民と民の壁を除く「マネー
ジメント機能」と、ゼロサム競争で地域間競争が厳しい状況の
中でお客様に来てもらうための「マーケティング機能」が必要
となります。
▼ 日本型DMOの行方
では、日本型DMOはどこに行くのか。
事業体としてハードの整備、または支援というのは一つの方向
です。
また、空き家の活用の運営、食の認証・品質保証、環境や歴史
資産の保全活用などにDMOがかかわります。
私は、日本型DMOを特区にできないか考えています。
そのためにも、特に金融関係、資金調達に関する勉強会は大至
急やりたいと考えています。
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『まちむら興し塾』風景・参加者 |
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今日の参加者
後列左から高野さん、佐藤さん、朝山さん、吉田さん。高野さん
前列 長坂、飯田さん、松井さん |
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質問タイム |
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感想を述べる飯田さん |
ご病気で久々参加の松井さん |
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飯田さん |
2年 高野さん |
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2年 金谷さん |
1年 佐藤さん |
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1年 吉田さん |
1年 朝山さん |
恒例の二次会 いつものように和気あいあい |
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二次会、佐藤さん、長坂 |
二次会 吉田さん。高野さん |
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